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第466号 1996(H8).10発行

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みのる式タマネギ苗移殖機を前提とした
タマネギ成型ポットベンチ育苗における培土の種類と施肥量

佐賀県上場営農センター
畑作・経営研究室
技師 中山 敏文
技師 甲斐田 健史*
(*現 佐賀県農業試験研究センタ一白石分場)

Introduction.

 佐賀県のタマネギの栽培面積は1,787ha(平成8年産)であり,その多く(約83%)は佐賀平野の水田地帯を中心に水稲裏作どして栽培されているが,当センターが所在する上場地域においては畑地における畑作タマネギとして生産されている。県内各産地では重量野菜であるタマネギ栽培の軽作業化,省力化を図るため,定植機や収穫機の導入による機械化一貫体系が検討,推進されている。

 当センターでは,機械化一貫体系確立のための試験研究に取り組んでいるが,特にみのる成型ポット移植機の効率的利用のためのポット育苗法に関して一定の知見を得た。本来,成型ポットの育苗は,慣行の苗床に成型ポットを密着させて置き,タマネギの根を苗床に伸ばして,移植間近に成型ポットを乾燥させ,断根後ポット鉢を固結剤で強制的に固結させる方法であり,特に,固結処理の良否が移植機の植付精度に直接影響を及ぼす。また,この育苗法は,移植機に適合させるために剪葉が必要である。

 この育苗法の試験の中で育苗をベンチ上で行うことにより,自根の根鉢が形成され,固結処理無しでも,移植機による植付精度が優れた苗が育成できることを見い出した。更に培土の種類や肥料の種類と量が苗の生育と移植後の生育及び収量について検討し,この知見を得たので紹介する。

材料と方法

1.成型ポット育苗法の違いと植付後の生育

 ネギ類培土を使用した成型ポット育苗トレイ(448穴)を地床に並べ,移植直前に雨よけし,ポット根鉢を乾燥させ,固結処理する方法を慣行育苗とした。試験区は,雨よけハウス下のベンチ育苗とし,培土はA社製培土1(造粒培土主体,以下培土1と略す)とA社製培土2(ピートモス主体,以下培土2)を使用,肥料としてメリット青(N:7%,P2O5:4%,K2O:3%)500倍液を5日毎に1トレイ当り1リットルかん水した。移植前に自根の根鉢形成を確認し,固結処理の有無を設けた。苗の生育と根鉢形成,移植機(OP-41)の植付精度及び植付後の生育収量を検討した。

2.成型ポットベンチ育苗における被覆肥料の利用と生育

 被覆肥料はマイクロロングトータル(以下マイクロロング)を使い,マイクロロング40は,培土1リットル当り窒素成分添加量200mg,371mg,500mgとし,マイクロロング70は371mgとした。対照は,液肥キッポ青(N:5%,P2O5:6%,K2O:4%)500倍を1トレイ当り1リットル3日毎に施用した。培土は全区とも培土2(ピートモス主体)とし,トレイに詰める前に被覆肥料を混合した。また,全期間雨よけハウス下で育苗し,苗の生育と根鉢形成,移植機での植付精度,移植後の生育収量について検討した。

3.成型ポットベンチ育苗における液肥施用間隔の検討

 培土に培土2(ピートモス主体,全窒素0.63%) を用い,固形肥料は施用せず,液肥のみで管理した。液肥は,キッポ青500倍液を1回当り1トレイに1リットルかん注し,施用間隔を毎日,1日おき,3日毎,5日毎とし,苗の生育と根鉢形成,移植機での植付精度,移植後の生育,収量について検討した。全期間雨よけハウス下で育苗した。

4.成型ポットベンチ育苗における育苗培土の検討

 育苗培土の種類をB社製培土3(バーミキュライト,ピートモス主体,以下培土3,N:300mg/リットル,P2O5:500mg/リットル,K2O:100mg/リットル),与作N150(バーミキュライト,ピートモス主体,N:150mg/リットル,P2O5:1000mg/リットル,K2O:150mg/リットル),培土2(N:945mg/リットル,P2O5:135mg/リットル,K2O:855mg/リットル)とし,全期間雨よけハウス下で液肥キッポ青500倍液を3日毎に1トレイ1リットルかん注し,液肥施用日以外は,毎日水のみ1トレイ1リットルかん注し,苗の生育及び根鉢形成,移植機での植付精度,移植後の生育,収量について検討した。

Results and Discussion

1.成型ポット育苗法の違いと植付後の生育(1995年)

ア)自根による根鉢は,ベンチ育苗のピートモス主体の培土2で形成し,造粒土の培土1では形成しなかった。

イ)播種時期の違いはあるものの,ベンチ育苗が慣行育苗に比べ,草丈,葉数,葉鞘径が小さくなった。ベンチ育苗は,慣行育苗に比べ養水分の吸収が劣ったためと考えられた。ベンチ育苗の培土の違いによる草丈は,ピートモス主体の培土2が播種時期が違うにもかかわらず造粒土の培土1より大きく,逆に葉鞘径は小さかった。(第1表)

ウ)自根で根鉢形成した培土2を固結剤無処理で移植(移植機OP-41)したところ,植付精度は,慣行と大差なく,無処理で機械移植が可能であることが認められた。自根で根鉢形成しなかった培土1は,固結剤無処理では植付精度が非常に低くかった。(第2表)

エ)移植後の生育は,ベンチ育苗の苗は慣行育苗の苗より3月下旬までは劣るが,4月以降は同程度になり,収穫日は一緒であった。商品収量はベンチ育苗が慣行育苗に比べてやや低いが大差はなかった。(第3表)

2.成型ポットベンチ育苗における被覆肥料の利用と生育(1996年)

 ベンチ育苗は,トレイポット内に添加する養水分のみでの育苗となる。ここでは培土に被覆肥料を添加し,その種類や量を変え生育を検討した。被覆肥料は,育苗トレイの1ポット容量が小さいので肥料の粒子が小さく培土と均一に混合しやすいマイクロサイズを使用した。

ア)いずれの試験区でも根鉢は自根で十分形成した。

イ)苗の生育は,マイクロロング40タイプの場合窒素添加量は多いほど生葉数,苗長,葉鞘径が大きくなり,培土1リットルに窒素成分で500mg添加すれば液肥3日毎施用と草丈を除けば大差無かった。マイクロロング70タイプは,マイクロロング40タイプ,液肥施用に比べ苗立率,草丈が高くなり,生葉数,葉鞘径は大差無かった(第5表)。植付精度は,マイクロロング70タイプが活着苗率97.3%と最も高くなった(第6表)。マイクロロング40タイプでは育苗期間60日に対して溶出する期間が短かったと考えられた。

ウ)移植後の生育は,2月下旬では,マイクロロング40タイプ・200mg添加が最も草丈が低く,他の区は大差なかった。この傾向は収穫期まで続いた。(第7表)

エ)収量は対照の液肥3日毎施用が最も多く,次いでマイクロロング40タイプ・500mg添加>マイクロロング70タイプ・371mg添加≧マイクロロング40タイプ・371mg添加,マイクロロング40タイプ・200mg添加の順になった。(第8表)

オ)以上よりベンチ育苗における被覆肥料は,育苗時点ではマイクロロング70タイプ・371mgが優れたが収量も考慮すればマイクロロング40タイプのN添加量を多くした区が優れ,今後被覆肥料のタイプと窒素添加量を更に検討する必要があると思われた。

3.成型ポットベンチ育苗における液肥施用間隔の検討(1996年)

 ベンチ育苗はトレイポット内培土に添加する養水分のみでの育苗となる。ここでは培土に固形肥料は添加せず,液肥を施用し,その施用間隔について検討した。

ア)根鉢形成は,いずれの区も自根で形成していた。

イ)苗の生育は,生葉数,苗長,葉鞘径は毎日施用が最も大きかった。他の区は生葉数,苗長は同等であるが,葉鞘径は液肥間隔が長くなる程小さくなった。(第9表)

ウ)定植時の植付精度は全区とも90%以上と高く, 定植機の適応性は高かった。(第10表)

エ)移植後の生育は,2月下旬では毎日液肥施用区が最も草丈が低く,他の区は大差なかった。この傾向は収穫期まで続いた。(第11表)

オ)収量は,5日毎施用が最も多く,次いで1日おき施用>3日毎施用>毎日施用の順になった。(第12表)

 以上より,液肥でベンチ育苗を行う場合,液肥施用の繁雑さ等を考慮すると,その施用間隔は3日~5日でよいと思われた。

4.成型ポットベンチ育苗における育苗培土の検討(1996年)

 自根による根鉢形成が見られるピートモス主体の育苗培土について,培土種類の違いが根鉢形成,苗の生育,植付精度,収量に及ぼす影響について検討した。

ア)苗の生育は,根鉢形成では全培土とも形成され,抜き取ってもほとんど崩れなかった。

イ)苗の生育は苗立率では培土3が81.3%と低く,他の培土は95%以上で差は無かった。生葉数は約2枚で全培土とも差なく,苗長は,与作N150が大きく,苗の揃いは培土3,与作N150がよかった。葉鞘径は与作N150が大きかった。(第13表)

ウ)移植時の植付時精度は,全区とも高く定植機の適応性が高かった。(第14表)

エ)移植後の生育は,2月下旬では与作N150と培土3の草丈が同等で培土2が最も低かった。4月下旬になると生育の差はなくなった。(第15表)

オ)収穫期は与作N150が他の区より4日遅れた。収量は与作N150 が最も多く,他の培土はそれより少なく大差なかった。(第16表)

 以上より,苗の生育,植付精度,生育,収量等総括的に検討すると与作N150 が,優れると思われた。

Summary

 以上の成績結果から,総合的に検討すると,みのる式タマネギポット移植機を前提とした成型ポット育苗を行う場合

ア)ベンチ育苗を行えば自根で根鉢が形成される。

イ)自根で根鉢が形成された苗は固結無処理でも移植機での移植が可能。

ウ)自根で根鉢を形成させる場合,培土は造粒培土よりもピートモス主体の培土が良い。

エ)培土の施肥については,固形肥料の場合,マイクロロングトータルの肥効が短いタイプは窒素添加量を培土1リットル当り500mg施用と多い方が良く,肥効の持続期間と施肥量は今後更に検討する必要がある。

オ)培土の施肥を固形肥料ではなく,液肥で行う場合,その施用間隔は3~5日程度でよい。

カ)バーミキュライト,ピートモス主体の培士を使用する場合,検討した市場培土の種類の中では与作N150 が適する。

キ)ベンチ育苗は,みのるの慣行育苗あるいは普通慣行育苗に比べると初期生育が劣り,収量もやや劣る。

 等が明らかになった。

今後の課題

1.最適培土と肥料の種類と施肥量
2.雨よけハウス下ではなく,露地育苗の可能性
3.ベンチ育苗ではなく,ベタ置きでの根鉢形成
4.移植後の初期生育促進対策
 等の検討を行い,より省力化,軽作業化を実現する育苗法,栽培管理の実現に向けて検討を進めていきたい。

 

 

セル成型苗の根の呼吸活性と定植後の発根力との関係

石川県農業総合研究センター
砂丘地農業試験場
主任技師 福岡 信之

Introduction

 セル成型苗による苗の大量生産方式は,育苗管理・移植作業の省力化を図り生産コストや輸送コストの低減化を行うための手段として,欧米ではすでに普及段階に入っている。わが国でも,近年,野菜苗を中心に苗の大量生産が志向されるようになり,葉菜類を対象とした省力・軽作業化を目的に,セル成型苗を利用した育商のシステム化が図られつつある。

 セル成型育苗は慣行の育苗に比べ,極めて少量の培養土での生育を余儀なくされるため,養水分の供給能の低下や機械的な根域制限による根の機能低下が問題となりやすい7)。一方,セル成型苗に関する研究は,これまでセルの形状1),セルの容量3),培養土の組成16)等のトレイ内での効率的な苗生産を目的とした技術開発が主体で,トレイ内での根の機能的変化,特に定植苗の発根力の評価は定植後の生育状況から間接的に推察されるにすぎなかった。

 ところで,高等植物において,発根力と地上部の生長との間には密接な関係がある6,10)。発根力は,定植後の根の生長量や根群分布で評価されるが5),発根に要するエネルギー源として,根の呼吸活性が密接に関係している18)The following is a list of the most common problems with the "C" in the "C" column.

 育苗期間の根の呼吸活性が定植後の発根力と密接に関係することは,イチゴ18),ホウレンソウ13)等の一部の野菜で知られているが,両者の関係の詳細については判然としていない。根の呼吸活性は,光18),温度14),水分状態9),土壌の種類8)などで変動するため,種々の環境下においてセル成型苗の根の呼吸活性と定植後の発根力との関係を調査することは,定植苗の生長量を評価する上で意義があると考える。

 本研究では,根の呼吸活性の測定が定植後の発根力を予測する上で有効な手法となることを実証することを目的に行ったもので,育苗期間中に遮光,摘葉,日長,地温,湛水処理をし,定植苗の根の呼吸活性と定植後の発根力との関係を調査した。

2. materials and methods

 セル成型苗の根の呼吸活性が定植後の発根力に及ぼす影響をみるため,5種類の実験を農林水産省野菜・茶業試験場ガラス室で行った。

実験1.遮光処理の影響

 材料はキャベツ“松波”を用いた。1994年9月6日に,セルトレイ(128 穴)に1穴3粒になるように播種し,播種後7日目に1穴1株に間引きした。培養土は,市販の園芸培養土を用い,播種後10日目より園試処方標準培養液の1/5濃度液を適宜灌水した。その他の管理は,慣行法にならって行った。

 処理区として,播種後16日目から21日目までの5日間,ダイオネット(遮光率95%)を被覆する遮光区と自然状態の対照区の2区を設けた。処理終了後,直ちに野菜園芸培養土を詰めた5号素焼き鉢に定植した。

 調査は,処理期間中の根の呼吸活性,処理期間中ならびに定植後の茎葉・根部の生長,定植後の苗の引抜き抵抗値について行った。根の呼吸活性の測定は,酸素電極法2)に準じた。苗の引抜き抵抗値は,万能引っ張り試験機を用いて地上部1cmの茎部を垂直に12cm・min-1の速度で引き上げた際の最大抵抗値とした。また,ルートボックス(3cm×30cm×40cm)を用い,定植後の根群の分布状況を観察した。

実験2.摘葉処理の影響

 1994年9月6日にセルトレイ(128穴)にブロッコリー“みよ緑3号”を播種した。処理区として,播種後40日目に展開葉の1/2を摘除する摘葉区と摘葉をしない対照区の2区を設けた。摘葉処理6日後に5号素焼き鉢に定植した。

 調査は,実験1と同様に根の呼吸活性茎葉・根部の生長,苗の引抜き抵抗値,ルートボックスによる根群の分布状況について行った。

実験3.日照時間の影響

 材料はキャベツ“松波”を用いた。1994年10月6日にセルトレイ(128穴)に播種し,播種後34日目に明期12時間,昼夜温20℃に設定した人工気象室に搬入した。光源は陽光ランプとメタルハライドランプで,照度は茎頂部で460μmol・㎡・sec-1であった。処理区として,人工気象室搬入後5日目より6日間日照時間をそれぞれ4,8,12時間とする3区を設けた。各日照区は午前12時より明期とし,暗箱を苗に被せることによって光照射時間を調節した。処理終了後5号素焼き鉢に定植した。

実験4.地温処理の影響

 材料はブロッコリー“みよ緑3号”を用いた。1994年9月6日にセルトレイ(128穴)に播種し,播種後42日目に地温の異なるグロースチャンバーに搬入した。処理区として,グロースチャンバー搬入後6日間,地温をそれぞれ20,30,40℃とする3区を設け,処理終了後5号素焼き鉢に定植した,気温は,グロースチャンバーを開放系としたため,いずれの処理区も室温と同様に推移した。

実験5.湛水処理の影響

 1994年9月6日にセルトレイ(128穴)にブロッコリー“みよ緑3号”を播種した。処理区として,播種後40日目より8日間,毎日午前9時よりそれぞれ4,8時間,セルトレイを完全に湛水状態とする2区と湛水処理をしない対照区の計3区を設けた。

3. results

実験1.遮光処理の影響

 処理期間中の植物体の生長をみると,遮光区では茎葉・根重はともに対照区に比べて増加量が小さく,生育が緩慢となった(第1図,A,B)。定植後の茎葉・根部の生長も遮光処理によって顕著に抑えられ,遮光区の定植後8日目の茎葉・根重は対照区のそれぞれ37,48%と小さかった(第1図,A,B)。

 根の呼吸速度は,遮光処理によって大幅に低下し,遮光区で対照区の約30%の値となった(第1図,C)。ルートボックスにより根群の分布状況を観察した結果,対照区では根量が多く根群の最高深度が11cmに達したが,遮光区では根量が少なく最高深度も6cm前後と浅かった(第2図,A,B)。苗の引抜き抵抗値は,対照区で大きく,遮光区では小さかった(第1図,D)。

実験2.摘葉処理の影響

 摘葉処理により,茎葉重は対照区の約1/2の重さとなった(第3図,A)。定植前の根部の生長は,対照区と摘葉区との間で大差なかった(第3図,B)。一方,定植後の根部の生長は,摘葉処理によって顕著に抑えられ,定植後8日目の根重は摘葉区で対熱区の約65%の値となった。

 根の呼吸活性は,摘葉処理によって低下し,処理後6日目の呼吸速度は摘葉区で対照区の1/2の値となった(第3図,C)。根群の分布状況を観察した結果,対照区は根量が多く根群の最高深度が14cmに達したが,摘葉区では根量が少なく最高深度も10cm前後と浅かった(第2図,C,D)。苗の引抜き抵抗値は,対照区で定植後4日目に189gf,8日目には273gfと大きく,摘葉区ではそれぞれ134,187gfと小さかった(第3図,D)。

実験3.日照時間の影響

 茎葉・根重は処理期間中,定植後ともに12時間日照区で最も大きく,日照時間の短い区ほど小さくなり,生育が抑えられた(第4図,A,B)。根の呼吸活性は,日照時間の短い区ほど低下し,処理8日目の呼吸速度をみると,4時間日照区では12時間日照区の50%の値となった(第4図,C)。

 根群の分布状況に対する日照時間の影響は大きく,日照時間の短い区ほど根量が少なく,また,根群の最高深度も浅かった(第2図,E,F,G)。苗の引抜き抵抗値は,日照時間の短い区ほど小さく,定植8日目には4時間日照区で12時間日照区の約70%の値となった(第4図,D) 。

実験4.地温処理の影響

 実験期間中の地温は,ほぼ設定どおりに推移した。地温処理期間中の植物体の生長をみると,20℃区と30℃区との間で差はなかったが,40℃区は他の処理区に比べ顕著に抑制されていた(第5図,A,B)。定植後の茎葉・根部の生長も処理期間中と同様で,地温の低い20℃区で旺盛で,地温が高い区ほど緩慢であった。根の呼吸活性は,いずれの処理区においても低下したが,その度合いは高地温区ほど大きかった(第5図,C)。

 根群の分布状況をみると,20℃区では根量が多く根群の最高深度は15cmに達したが,40℃区では根量が極端に少なく地表下6cmに大部分の根が観察された(第2図,H,I,J)。苗の引抜き抵抗値に対する地温の影響は特に定植6日目にみられ,40℃区は20℃,30℃区のわずか50%の値となった(第5図,D)。

実験5.湛水処理の影響

 植物体の生長に対する湛水処理の影響は特に定植後に認められ,湛水時聞が長い区ほど茎葉・根重が小さく,生育が抑えられた(第6図,A,B)。根の呼吸活性は,全区で処理期間中低下したが,その度合いは湛水処理区で大きかった(第6図,C)。

 根群の分布状況を観察した結果,対照区では根量が多く根群の最高深度も16cmに及んだが,湛水処理によって根群の発達が抑えられ,8時間湛水区では根量が少なく最高深度も9cmと浅かった(第2図,K,L,M)。苗の引抜き抵抗値は,湛水時間の長い区で小さく,8時間湛水区は対照区の約80%の値となった(第6図,D)。

4.総合考察

 定植苗の発根力と収量との間には密接な関係があり,発根力の高い苗では収量が多く,根が老化し発根力が低下した苗では,定植時のいわゆる“植傷み”がひどく,定植後の生育の回復が抑えられて収量が低くなる5)。定植苗の発根力は,活着の良否を左右し,定植後の生育に影響を与える重要な苗質の評価基準の一つである。

 これまでに,苗の発根力は,定植後の根量,根数の増加程度や根群の発達状況等で評価されてきた6)。本実験では,定植後の根重の増加量,根群の分布状況に加えて,万能引っ張り試験機を用いて苗の引抜き抵抗値を測定した。その結果,定植後に根重の増加量が少なく根群分布が浅い場合,苗の引抜き抵抗値が小さく,逆に根重の増加量が多く深い根群分布を有する苗では引抜き抵抗値も大きかった。

 ホウレンソウセル成型苗においても,定植時の発根力と苗の引抜き抵抗値との間には密接な関係があることが知られている13)。したがって,定植苗の発根力を評価するには,苗の引抜き抵抗値の測定が簡易で有効な手法となるものと考えられる。

 ところで,発根に要するエネルギーは,根における炭水化物の代謝によって獲得される18)。通常,根の呼吸活性が高いと,エネルギーは根の生長・養水分の吸収・根の維持に利用されるが,呼吸活性が低いとエネルギーの大半が生体を維持するために利用され,根の生長に対する利用効率が急速に低下する4)。このことは,根の呼吸活性の高低によって,定植後の発根力が異なることを示唆している。

 特に,セル成型苗では,育苗期間の長期化による発根力の低下が問題となりやすい7)。セル成型苗の発根力を定植前の根の呼吸活性の測定によって評価することが可能であれば,健苗を育成し,活着技術の向上を図る上で有効な苗質評価技術となりうる。本実験では,種々の環境下でキャベツ・ブロッコリーセル成型苗の根の呼吸活性と定植後の発根力との関係を調査した結果,定植前の苗に遮光,摘葉,光照射時間の短縮,高地温,湛水等の根の呼吸活性の低減を招く処理をすると,定植後の発根力が顕著に抑えられることが明らかとなった。

 遮光,摘葉処理や光照射時間を短くした処理による根の呼吸活性の低下は,同化産物の量的な不足と根への同化産物の分配率の低下にもとづく炭水化物蓄積効率の低下によるもので12,18),高地温下で根の呼吸活性が低下したのは,根への炭水化物の分配率の低下に加えて14),根における同化産物の呼吸損量の増加17)が原因であることが知られている。

 また,湛水処理によって根の呼吸活性が低下したのは,根への酸素供給の量的不足による機能低下(15)が主因であるものと推察する。定植前の根の呼吸活性が低下すると,定植後の発根が抑えられたことは,根の呼吸活性の測定が苗質評価技術の一手法となりうることを示唆している。

 清水ら13)は,ホウレンソウセル成型苗において根の呼吸活性と定植後の発根力との関係を検討し,発根力は根の呼吸活性が高い場合に旺盛で,苗齢が進行し根の呼吸活性が低下した苗では劣ることを報告している。

 本研究では,キャベツ・ブロッコリーセル成型苗の定植後の発根を予測する手法として,根の呼吸活性の測定が利用可能であることが実証できた。セル成型苗の苗質を適正に評価し,定植後の物質生産を効率的に図るためには,定植前の根の呼吸活性の測定が実際面で有効であるものと考える。

6.引用文献

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(5)加藤徹・楼恵寧,1986,ナス・ピーマンの育苗とその生産力に関する研究(第1報)鉢上げ時の植え方の影響,生環調,24(3-4):117-122

(6)加藤徹・楼恵寧,1987,ナス・ピーマンの育苗とその生産力に関する研究(第2報)育苗時施肥量の影響,生環調,25(1)13-18

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(11)楼恵寧・加藤徹,1987b.ナス・ピーマンの育苗とその生産力に関する研究(第6報)ナスにおける育苗中の日長時間の影響,生環調25(3)103-107

(12)楼恵寧・加藤徹,1988,ナス苗の素質に関する生理的研究(第1報)日長時間と日照の強さの影響,生環調,26(2):69-78

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(14)宍戸良洋・熊倉裕史,1994,トマトにおける光合成・蒸散・光合成産物の転流・分配及び根の呼吸に及ぼす培地温の影響,園学雑,63(1):81-89

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